まだ私がスーパーをつくろうといろいろと模索している時だった。
その日は家にいて玄関のドアはあけっぱなしだった。
「チュンチュン」と声がするのでふと玄関を見ると1羽のすずめが
家に入ってきた。
「えっ。」と思ったがどうせすぐに出ていくだろうと思っていた。
しかし、玄関のマットの上でこちらを見てじっとしている。
私は鳥は苦手だった。
子供の頃、妹が祭りでカラーひよこを買ってそれが大きくなり
にわとりになってよく追い掛け回されたことがあった。
怖かったので親に言ったら親は近所の人にあげたのだった。
その日に近所の人が家に来て「ちょっと硬かったけどうまかった
よ~。」と言ったが、妹には逃げたと言っていたらしく、それを聞
いて妹が大泣きした事件があった。
でも毎日、威嚇されて追い掛け回されて本当に怖かったのだ。
でも、雀はつつかれても痛くなさそうだし、どうせつかもうとしても
逃げるだろうと思った。
しかし、つかもうとするとじっとしている・・
「ええっ。」なんで逃げないんだ?
きっとどこかで飼われていたんだろうと思ったが、雀を飼う人なんか
いるのかな~とも思った。
家にはおおきなベランダがあり、そこにはセキセイインコの小屋が
作ってあって10羽ぐらい飼っていたがつかむようなら噛まれまくって
にげて行くのが当たり前だった。
なのにその雀はつかみやすいようにじっとするのだった。
小さなお客さんだとおもってほっておいた。
家族も帰ってきて雀を見たときはびっくりしていたが、雀がいつでも
出ていけるように窓は開けておこうということになった。
しかし、いっこうに出て行く気配はなかった。
とりあえずその雀を「チュンタ。」と名づけた。
夕飯の時間になったのでチュンタと言うと自分の名前とわかっている
のかチュンタが飛んできてテーブルにとまった。
箸にご飯をつまんでチュンタに差し出すと食べだした。
チュンタがコップに入った麦茶を飲もうとしてコップにとまり損ない
コップに落たときはみんな大笑いした。
その日からチュンタは家族となった。
ペットではなくあきらかに家族だった。
チュンタは自由だったが窓にとまって外を眺めていても出ていこう
とはしなかった。
芸もしこんでないのに「チュンタ。」と呼べばどこからともなく飛んで
きて、上を旋回し、手を出していれば手にとまり、何もしなければ
肩にとまった。
本当に不思議だった。
不思議に思うことだらけだったが、普通鳥を飼っていたらフンをする。
しかし、チュンタのフンのあとを見たことがなかった。
家族でチュンタのねぐらの話になった。
雀を飼ったことなど当然ないのでどうしたらいいかわからなかったが
母親がとりあえず竹の四角い鳥かごを買って来た。
でも出はいりが自由にできるように入口は取り外しておいた。
チュンタは何故かそこが自分のねぐらだとわかったようで自分から
その鳥かごに入っていった。
そんな不思議な雀、チュンタとの生活は楽しかった。
とくに食事の時は家族みんながチュンタといっしょの食事を楽しみに
していた。
私がおもしろがって梅干をあげるとしょっぱかったのか必死で水を
飲みに行くチュンタがおかしかった。
でもそんな楽しい日々もいつまでも続かなかった。
1ヶ月が過ぎようとしたときだった。
鳥かごはフンを掃除しやすいように下に隙間があって、そこに
新聞などを敷いてあるのだが、そこにもぐって出られなくなったのか
朝、鳥かごを見たら狭いところにもぐって出れなくなったらしく
チュンタが死んでいた。
「呼んでくれれば助けに来たのに・・・。」
本当の家族であったため、家族は悲しみに包まれていた。
自由なチュンタがあんな死に方をするなんてとみんなショック
だった。
私はスーパーができる物件を探す毎日だったが、チュンタのおかげで
家にかえるのが楽しみだった。
こんなこと、これからの人生には起こらないだろうなと思った。
ひと夏の不思議な体験だった。
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